日本統計学会会報原稿

2006年度統計関連学会主催 市民講演会報告

人口減少と少子高齢化の社会と経済 − 統計データで読む21世紀の日本 −」

企画担当:矢島美寛(東京大学)、渡辺美智子(東洋大学)、照井伸彦(東北大学)

 

統計関連学会の社会貢献活動の一環として、企画セッションとして一般市民を対象とした市民講演会を開催した。開催に当たっては、宮城県、仙台市、東北経済産業局の後援を得て、「人口減少と少子高齢化の社会と経済 − 統計データで読む21世紀の日本 −」のテーマで二人の講師をお迎えし、20069517時−19時の間に、東北大学川内北キャンパス講義棟B200教室において実施した。地元の河北新報へ記事として取り上げられたこともあり、開催前から一般市民から数多くの電話問合せがあり、当日は平日にもかかわらず、約200名の参加者を得た。

最初の講演は、国立社会保障・人口問題研究所人口動向研究部長・金子隆一先生による「人口統計データの示す日本の過去、現在、そして未来」であった。日本は今世界で最も高齢化の進んだ国となっている中で、人口統計には、人口増加率、出生率、死亡率などのいわゆるマクロ指標のほかに、人々のライフコースに注目した平均寿命や合計特殊出生率などのライフコース指標があり、個人の生き方に何が起きているのかを理解することに貢献しているが、そうした馴染みやすい指標には間違った理解や議論を導いている。これから日本人はどう生きてゆくのか、どういう社会を築いてゆくのか、国民的な議論に科学的な視点を与えるためにも、統計の正しい理解が必要で、まずこうした指標の見方を解説され、その上で日本人のライフコースに視点をおきながら、人口統計の示す過去から現在、そして未来にわたる日本社会の変化についてお話しいただいた。

引き続き、京都大学大学院経済学研究科教授・橘木俊詔先生による講演「少子・高齢化の下での社会保障制度改革」が行われた。少子高齢化を迎えて国民の間に社会保障制度への不安感が高まっており、政府の採用する政策は、保険料負担の増加と給付の削減の連続で国民の不安感は減少しない。そのために発想の転換を図る必要があり、綿密なモデルと統計データにもとづく分析結果により、“年金に関しては財源の徴収を基礎年金全額税方式に変更し、給付も高齢夫婦が最低限生活できる額として2人で月額17万円を支給すること、公的年金は一階部分の基礎年金だけに限定し、平均15%の累進消費税で徴収すること、2階部門は民営化して積立方式で運営すること”を提案された。この制度改革は国民すべてに老後の安心感を与え、また経済効率も高め、さらに保険料徴収がうまく進んでいない現状を打破できるなどのメリットが強調された。

各講演後には質疑と討論が行われ、とくに年金徴収新方式の提案に関してはエネルギッシュで挑発的なご講演に対して参加者との活発なやり取りが行われ、盛会のうちに市民講演会を終了した。

(文責:照井伸彦)